食道の病気(逆流性食道炎・食道がんなど)について
食道は消化管の一部で、喉から胃にかけての約25~30cm(成人)ほどあります。
ここでおこる病気には、逆流性食道炎や、食道がん等があります。
逆流性食道炎について

逆流性食道炎とは、胃酸や十二指腸液が食道に逆流して、食道の粘膜に炎症などを起こす病気です。
症状としては、胸やけ、胸部の違和感、嘔気(げっぷ)などの逆流症状などです。
症状を伺い、内視鏡による検査等で診断し、胃酸をおさえる薬や粘膜保護剤による治療を行います。
食道がんについて

食道がんの多くは食道の粘膜から発生し、進行すると胸部、腹部や頚部のリンパ節など広範に転移することが特徴の悪性疾患です。もちろんさらに進行しますと、肝、肺などの遠隔臓器に転移が発生致します。
食道がんは症状は出やすく、初期の胸部違和感から、食べ物を飲み込んだ時の痛みや、しみるという症状またはつまり感を伴うことが多いです。
食事のたびに食べ物がつかえる感じが強くなり、体重も減少してくるような場合には、がんが進行している可能性もあるため、早急な対応が必要となります。
上部消化管内視鏡検査(EGD)等の検査で早期発見をする事が重要です。特に40代後半から、罹患率が増加しはじめますので、症状の無いうちから定期的に健診を受けていただくことをお勧め致します。
胃・十二指腸の病気(胃潰瘍・胃がんなど)について
慢性胃炎

ピロリ菌がいて長期炎症を起こしている状態が慢性胃炎(または慢性萎縮性胃炎)です。長期にピロリ菌が胃についていますと、胃癌発生が増えると言われており、ピロリ菌が確認されれば、除菌の対象となります。除菌はボノサップという3種類5個の薬を1週間服薬する事で終了します。除菌後1ヶ月から3ヶ月の間で尿素呼気試験という検査にて確認が必要です。除菌にて胃癌発生の確率は1/3程度に下がりますが、胃癌発生はわずかに可能性が残ります。毎年の内視鏡による確認精査が必要です。
逆流性食道炎
比較的頻度の高い病態です。ピロリ菌がいない胃でも食道裂孔ヘルニア、バレット食道などとからんで発生する可能性があります。ピロリ菌の除菌後に胃酸分泌が活発になり発生する事もあります。胃酸分泌を押さえる薬(PPIやH2 RA)や粘膜保護製剤などの使用により症状をコントロールする事が可能です。
消化性潰瘍

ピロリ菌がいる胃などに胃潰瘍、十二指腸潰瘍が多いと言われています。PPIを服用すると共に、胃粘膜保護製剤などを併用して治療します。時に出血(黒色便)、腹痛、穿孔などの重篤な状態を呈することがあり、穿孔性腹膜炎の場合には緊急手術が必要になることもあります。以前は手術もありましたが、現在は適切な投薬によって狭窄、穿孔、悪性疑い症例を除いては保存的治療が可能です。
胃癌

胃癌はピロリ菌との関連の強い疾患と考えられており、最近は除菌が進んだ影響もあり減少傾向とされています。早期胃癌の中でも分化型粘膜癌は粘膜切除術の対象となりますが、未分化癌や粘膜下層癌以上の進行した癌は手術対象となります。胃癌は早期には粘膜内に限局していますが、この時には基本的に症状はありません。粘膜下層以上に進行して軽度の痛みなどが発生します。痛みの無い時に発見し、早期発見、早期治療が原則です。筋層以上の進行癌はリンパ節転移、肝、腹膜、肺、卵巣などの転移を来たし、遠隔転移を伴うと完全な治療が困難となります。進行胃癌には存在位置により各種の胃切除術が必要となります。
胃ポリープ
基本的には治療対象とならない事が多く、胃底腺ポリープはピロリ菌のいない胃に出来ることが多い(胃底腺ポリープ)とされます。切除することは基本的にはありませんが、幽門部の孤立性ポリープには時に癌が含まれます。内視鏡検査にて安全かポリープか確認が必要です。
肝臓の病気(肝炎・肝臓がんなど)について

肝臓の病気は、肝炎、肝硬変、肝臓がん等があります。糖分や脂質の取り過ぎ、アルコールの過剰摂取、ウイルスの侵入などで、肝臓に異常をきたすために起こる病気が多くあります。
肝炎(慢性肝炎)

肝炎は、肝臓に炎症がおこり、発熱や黄疸、全身の倦怠感等の症状をきたす病気です。
日本では約8割の肝炎がウイルス性と言われています。感染経路については、経口感染、血液感染、産道感染等様々で、ウイルスの型(A型、B型、C型、E型)によってルートに違いがあると言われています。最近はアルコール性に伴うアルコール性肝炎や肥満に伴う非アルコール性肝障害(NAFLDやNASH)が問題となっております。
肝炎が適切に治療されずに重症化すると、慢性肝炎から肝硬変といった重篤な状態になる場合があります。慢性肝炎以上になると肝細胞癌という肝細胞由来のがんの発生リスクが増えます。血液検査と超音波検査からCT検査により肝全体の正確な診断が可能です。腫瘍は手術やラジオ波などの治療対象となり、処理をしても同時性、異時性に再度発生する可能性が高い疾患です。基幹病院を紹介させていただきます。肝機能障害、腹水管理など含め、当院で治療可能ですが、検査を行っていない肝炎患者様は早めにご相談ください。
肝硬変

肝硬変とは、幹細胞が死滅・または減少することによって、肝臓が硬く変化し、機能が著しく減衰する病気です。
慢性肝炎から長期間経過の後に増悪することが多く、肝機能障害に伴う食欲不振や、疲れやすい等の症状が、重篤化すると、黄疸や腹水が溜まったり、吐血、意識障害に陥ることがあります。肝臓が硬くなるに従い、食道静脈瘤、痔、巨脾(脾臓が大きくなる)などが増悪することが知られています。
血液検査や超音波検査、CT検査等の画像診断で状態を3~4ヶ月毎に定期的に評価します。
一度死滅して、硬く変化した細胞は元に戻らないため、慢性肝炎のうちに病気の進行を防ぐ必要があります。
胆のう・胆管の病気(胆石・胆のう炎・ポリープなど)について

胆管(肝外胆管)は肝臓から十二指腸をつなぐ胆汁が通る管のことです。長さは約10~15cm、で太さは0.5~1cmの管です。
胆のうは、胆汁を一時的に貯めて濃縮する袋状の臓器で、西洋梨状の形をしています。食事をする際に貯めていた胆汁を胆管を通じて十二指腸に出す役割があります。
胆汁は肝臓で生成される黄褐色でアルカリ性の液体で、食べ物とまじりあって、脂肪の吸収を助ける働きがあります。
胆石症

胆汁の成分が固まって砂状、石状になり、胆管や胆のうに溜まる病気です。女性、肥満、中高年に多いとされています。痛みや症状を伴わず、痛みなど日常生活に支障を来たさないことも多いため、超音波検査などにより初めて見つかる場合もあります。症状が無い場合は、溶解剤などの投与のもと経過観察となります。胆石合併胆嚢は基本的に慢性胆嚢炎状態です。急性の炎症となった場合は急性胆嚢炎となります。
手術対象は、1.腹痛を繰り返す方、2.肝機能障害、黄疸などの出現した方、3.悪性(胆嚢癌)の疑われる方です。
手術は基本;腹腔鏡下胆嚢摘出術となります。
急性胆のう炎
急性胆のう炎は、胆石症や細菌感染などが原因で起こる胆のうの炎症です。胆石がはっきりしない無石胆嚢炎の事もありますが胆のう炎は9割が胆石によっておこるとされています。急性炎症に伴う痛みが発生した場合には、抗生物質投与により軽快する場合もありますが、重症症例では超音波ガイド下に胆嚢ドレナージが必要となります。胆嚢の炎症は繰り返す事が多く、胆のう穿孔などのリスクも高くなりますので、炎症が軽快した段階で腹腔鏡下胆嚢摘出術の適応となります。
急性化膿性胆管炎
落下した胆管結石などにより発熱、腹痛が発生した場合には菌による敗血症などよりかなり重篤な症状となる事があります。緊急な対応が必要で基幹病院での緊急内視鏡による胆管結石切石術+ドレナージなどの治療が必要になります。これも落下結石の除去した後に腹腔鏡下胆嚢摘出術の適応となります。
膵臓の病気(膵炎・膵のう胞・膵臓がんなど)について

膵臓は、ホルモンを分泌する内分泌機能と消化酵素である膵液を小腸に送り込む外分泌機能がある器官で、これらに異常をきたすことで、膵炎や、膵のう胞、膵臓がんの病気がおこります。また、糖尿病も内分泌の機能に異常をきたして、血糖値が異常に上昇する病気です。
膵炎
膵炎とは、何らかの原因で、膵臓に炎症をおこす病気です。原因は胆石、またはアルコール多飲に起因するものが多く、重症な場合は死に至るケースがあります。
腹痛、発熱、嘔吐などの症状があり、押されると痛み(圧痛)を伴います。また、胆石症による急性膵炎の場合は、内視鏡的乳頭切開切石術によって治療が可能です。
膵のう胞
膵のう胞とは、膵臓にある、液体が溜まっている袋状のもの(のう胞)です。この、のう胞が大きくなると悪性化するとされ、悪性の場合は手術によって切除する必要があります。一般的に嚢胞腺癌の成績は通常の膵癌より良好です。
膵臓がん
膵臓がんは、膵臓にできる癌で、早期発見が非常に難しく、特に進行の早い難治性癌のひとつです。喫煙や肥満、糖尿病、遺伝によるものなど、様々な要因で発症すると言われています。腫瘍マーカーや画像検査によって発見することが困難な事も少なくなく、マーカー陰性症例、超音波検査での陰性症例などが散見されます。造影腹部CTは時に膵癌の早期発見に大きな力を発揮します。
大腸の病気(大腸炎・大腸がん・大腸ポリープ・過敏性腸症候群など)について
大腸ポリープ

大腸ポリープは5mm以上の際には癌になる可能性があり(腺腫内癌)、内視鏡的切除術の適応となります。内視鏡的に確認するだけでは腺腫か小さな癌病巣(腺腫内癌)を区別することが困難ですので、内視鏡的にポリープ切除を行い、病理学的に確認する手法がとられます。当院では切除後1週間で結果をお知らせしております。大きなポリープ、または明らかな進行癌症例では手術対象となります。
大腸癌

大腸から発生する粘膜由来の悪性腫瘍です。腺腫(ポリープ)と腺腫内癌症例は区別が付きにくく、内視鏡的ポリープ切除を行って病理学的に区別を付けます。粘膜癌までは周囲リンパ節転移が無いため、ポリープ切除で治療は終了しますが、粘膜下層以上に進行した場合には転移の可能性が高くなるため、リンパ節郭清を伴う手術が必要となります。比較的早く発見した物では腹腔鏡下大腸切除術で小さな傷での手術で終了することが多くなっております。周囲のリンパ節転移を伴うような進行癌では術後に化学療法を行う必要が生じます。癌の進行度に合わせて適切な対応が決められております。
便秘症

便秘の程度は様々ですが、便秘と下痢を繰り返したり、高度便秘の場合には大腸癌などの合併を考慮して精査が必要です。
大腸がんは最近増えており、ガンの死亡者数でみると女性では第1位、男性では第2位となっています。
精査の上器質的な疾患が否定された症例では適切な下剤、漢方薬などを処方して排便コントロール致します。便秘型過敏性腸症候群の場合には新しいリンゼスという薬が有効な場合があります。
大腸憩室
大腸憩室はCTや大腸CTでは比較的良く指摘されます。盲腸から上行結腸、下行結腸からS状結腸に好発部位があり、腹痛、発熱などの憩室炎、下血、狭窄、穿孔性腹膜炎などの原因になる事があります。憩室炎症状の場合には抗生物質投与、下血の場合には内視鏡的止血術が必要となります。これらの予防には便秘やバリウム検査の回避が重要となります。
過敏性腸症候群
排便の回数が3~5回/日程度と多く、下痢に近い軟らかな排便で、炎症性腸疾患ほどの炎症性変化が無い病態です。整腸剤、イリボーなどの薬を用いて排便コントロールを行います。
炎症性腸疾患
下痢や血便、便意頻数、発熱などで比較的若い方に多く発生します。炎症性腸疾患には、潰瘍性大腸炎、クローン病などがあります。両者共届け出が必要です。
内視鏡にて大腸の細胞を取り、確定診断としますが、特効薬である5-ASA製剤などで治療を行います。重傷者にはレクタブルなどの肛門内投与製剤などを必要とすることがあります。最近炎症性腸疾患は増加傾向です。
